粕谷大智先生faceookより2020-10-8
先の日本顔面神経学会での討論とエビデンスから 
鍼灸治療の可能性について

麻痺の治療目的は回復の促進ではなく『抑制』です。
神経再生を抑制させて過誤再生を防ぐ。
いかに過誤再生を防ぎ後遺症を予防・軽減させるか。

その理由は、顔面筋は表情を作るために、
毎日フルパワーで動いているわけではないので
、ある程度の神経回復で十分です。
なので回復を促進させるより、
問題なのは不要な神経枝の再生(過誤再生)を防ぐことが重要です。

(参考文献:柏森良二:顔面神経麻痺リハビリテーションの新しい展開.日耳鼻11786-95.2014
ボトックスで不要な神経枝の機能を止めると、
患者さんは皆「良くなった」と感じられるのはそのせいだと考えられています。

神経障害が中等度の方はいったん治癒になって、
その後
2か月ぐらいして共同運動がでてくるので、
「この辺で神経再生止まってくれないかな
」と思うこともあります。
不要な神経枝の誘導を防止または抑制する方法があれば
ほぼ顔面神経麻痺の臨床・研究は終了ではないかとも考えられています。

(参考文献:村上信五:ウイルス性顔面神経麻痺-将来展望と課題-.宿題報告,2015
では、どうすれば『抑制』できるか?
今のところ推奨できる治療法はありません。

当院耳鼻科の先生のお話では、幼児期に顔面神経麻痺になった人は
神経障害が強くても病的共同運動が比較的軽く、
胎児期から幼児期には顔面神経の適切な神経枝を
適切な筋に配置する位置情報分子があって、
これが成長すると失われていくのかも知れないとお話されていました。
大変興味深いお話です。

電気刺激は神経の成長や機能を大きく変える可能性があり、
「抑制に働く鍼通電刺激」または「抑制に作用する鍼灸治療」が
可能になれば、顔面神経麻痺の治療に大いに役立つと思います。